FIR に極は無い?

FIR (Finite Impulse Response) フィルタは全零モデルを表現するのに使われますが、FIR は零点ばかりで極は無いのでしょうか?

あまり語られることはありませんが、実はあるんです。極があるのは IIR (Infinite Impulse Response) フィルタだけだと思っていませんでしたか?

FIR の伝達関数は \begin{eqnarray} H(z) &=& a_0 + a_1 z^{-1} + a_2 z^{-2} + \cdots a_N z^{-N} \\ &=& \frac{a_0 z^N + a_1 z^{N-1} + a_2 z^{N-2} + \cdots a_N}{z^N} \\ \end{eqnarray} と書けますので、原点 \(z=0\) に \(N\) 位の極があり、フィルタに \(N\) サンプルの遅延をもたらしています。

「フィルタに遅延がある」というと悪いイメージがありますが、もし原点に極がなく、 \begin{eqnarray} H(z) &=& a_0 z^N + a_1 z^{N-1} + a_2 z^{N-2} + \cdots a_N \end{eqnarray} だけだったら、インパルス応答が負の時刻に値を持ち、非因果的なフィルタになってしまいます。

非因果的とは、入力がまだ無いのに、未来の入力によって、今、出力が生じることです。

オーディオで「未来の音が聞こえる」というと、キャッチコピーとしてはかっこいいのですが、タイムマシン同様、物理的に実現不可能です。