積分 上級
上級(大学院レベル)ルベーグ積分と$L^p$空間(大学院レベル)
上級の概要
上級では、現代解析学の基礎であるルベーグ積分を学ぶ。測度論に基づく厳密な積分の定義、強力な収束定理、そして関数解析で重要な$L^p$空間を扱う。
学習目標
- ルベーグ測度と可測集合を理解する
- ルベーグ積分の構成を理解する
- 収束定理(単調収束、優収束)を使いこなす
- $L^p$空間の構造を理解する
目次
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第1章
σ-加法族と測度
σ-加法族、測度の定義、完備化
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第2章
ルベーグ測度
$\mathbb{R}^n$上の測度、外測度、カラテオドリ
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第3章
可測関数
可測関数、単関数、ほとんど至るところ
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第4章
ルベーグ積分
非負関数、一般の関数、リーマンとの関係
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第5章
収束定理
単調収束、Fatou、優収束、積分と極限の交換
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第6章
$L^p$空間
$L^p$ノルム、完備性、稠密性、双対
前提知識
- 積分 中級の内容
- $\mathbb{R}^n$ の開集合・閉集合、ボレル集合などの基礎
- 集合論の基礎(集合演算、写像、可算集合、可算和・可算共通部分)
基本定理
単調収束定理
$0 \leq f_1 \leq f_2 \leq \cdots$が可測関数列で$f_n \to f$(各点収束)のとき:
$$\lim_{n \to \infty} \displaystyle\int f_n \, d\mu = \displaystyle\int f \, d\mu$$優収束定理(Lebesgue)
$f_n \to f$(ほとんど至るところ収束でよい)で、$|f_n| \leq g$($g$は可積分)のとき:
$$\lim_{n \to \infty} \displaystyle\int f_n \, d\mu = \displaystyle\int f \, d\mu$$$L^p$空間の完備性
$1 \leq p < \infty$ に対し、$\|f\|_p = \left(\displaystyle\int |f|^p \, d\mu\right)^{1/p}$ とすると $L^p(\mu)$ はバナッハ空間
$L^\infty(\mu)$ も本質的上限ノルム $\|f\|_\infty = \operatorname*{ess\,sup}|f|$ に関してバナッハ空間
特に$L^2$はヒルベルト空間
$0 < p < 1$ では上の式はノルムにならない(三角不等式が成り立たない)ので、この形の主張から外れる。
読み物
- 横に切るという発明 ― ルベーグの数え方 [読み物] — リーマンは定義域を縦に、ルベーグは値域を横に刻んだ。その一手がなぜ収束定理を生み、現代解析の土台になったのかをコインの比喩から語る。
- 「大きさ」を作り直す ― 測度という発明 [読み物] — 長さ・面積を散らばった集合にまで広げる測度は、「大きさ」そのものの再発明だった。可算加法性(σ-加法性)という核心から、通常の体積が持つ性質(加法性・合同不変性)を保ったままでは、すべての部分集合に一貫した「大きさ」を与えられないことへとつながるバナッハ=タルスキの逆理まで語る。
よくある質問
ルベーグ積分はリーマン積分と何が違うか
リーマン積分は定義域を縦に分割して短冊の面積を足し上げるのに対し、ルベーグ積分は値域を横に分割し「関数値がある範囲に入る点の集合の測度」を足し上げる。この違いにより、ディリクレ関数のようにすべての点で不連続でリーマン可積分でない関数も扱え、単調収束定理・優収束定理によって積分と極限の交換が広いクラスで正当化される。有界区間上のリーマン可積分関数に対しては、両者の積分値は一致する。
なぜ測度論が必要か
長さ・面積・確率といった「大きさ」を、区間や矩形だけでなく複雑に散らばった集合にまで矛盾なく与えるには、$\sigma$-加法族と測度という枠組みが要る。測度があって初めて「ほとんど至るところ」という概念が定義でき、零集合上の値の違いを無視する柔軟な積分(ルベーグ積分)や、確率論・関数解析の厳密な基礎が構築できる。
$L^p$空間とは何か
$1 \le p < \infty$ に対して $L^p(\mu)$ は、$\int |f|^p\,d\mu < \infty$ を満たす可測関数を零集合上の違いを同一視して集めた空間で、ノルム $\|f\|_p = \left(\int |f|^p\,d\mu\right)^{1/p}$ を備える。この空間は完備(バナッハ空間)であり、特に $p=2$ の $L^2$ は内積をもつヒルベルト空間となって、フーリエ解析や量子力学の舞台になる。$p=\infty$ の場合は本質的上限ノルムで定義し、これもバナッハ空間になる。ヘルダーの不等式・ミンコフスキーの不等式が基本的な道具となる。