μ

μ-low (みゅーろー)

音の大きさを対数的に感じる人間の聴覚特性を利用し、小振幅時の S/N を改善する伸長圧縮方式。

原信号 $x$ がアナログの場合、$\mu>0$ として \begin{eqnarray} y &=& {\rm sgn}(x) \frac{\log_e(1+\mu|x|)}{\log_e(1+\mu)},\ |x|\leq 1 \label{y} \end{eqnarray} で、小振幅部分を大きく伸長した信号 $y$ を記録伝送し、 \begin{eqnarray} x &=& {\rm sgn}(y) \frac{(1+\mu)^{|y|}-1}{\mu},\ |y|\leq 1 \label{x} \end{eqnarray} で記録伝送された信号 $y$ を圧縮して原信号 $x$ を復号することで、$y$ に混入する小振幅ノイズの影響を小さくすることができる。

伸長特性 $y=F(x)$
 
圧縮特性 $x=F^{-1}(y)$

式(\ref{x})で $x$ を復号できることの証明

$x$ の符号で場合分けして式(\ref{y})から式(\ref{x})を導けることを示す。

$x>0$ の場合

$\mu>0$ より式(\ref{y})は \begin{eqnarray} y &=& \frac{\log_e(1+\mu x)}{\log_e(1+\mu)} &>& 0 \end{eqnarray} である。変形してゆくと \begin{eqnarray} y \log_e(1+\mu) &=& \log_e(1+\mu x) \\ && 両辺の指数を取って \nonumber\\ \exp(y \log_e(1+\mu)) &=& 1+\mu x \\ && 一般に e^{a b}=(e^b)^a と書けるので \nonumber\\ \left\{\exp(\log_e(1+\mu))\right\}^y &=& 1+\mu x \\ && \exp と \log_e が打ち消し合うので \nonumber\\ (1+\mu)^y &=& 1+\mu x \\ && 移項して \nonumber\\ \mu x &=& (1+\mu)^y-1 \\ && 両辺を \mu で割って \nonumber\\ x &=& \frac{(1+\mu)^y-1}{\mu} \\ && y>0 だから {\rm sgn}(y)=1 なので次のように書いてもよい \nonumber\\ x &=& {\rm sgn}(y)\frac{(1+\mu)^y-1}{\mu} \\ && y>0 だから y=|y| とも書けるので \nonumber\\ x &=& {\rm sgn}(y)\frac{(1+\mu)^{|y|}-1}{\mu} \end{eqnarray} $x,y>0$ だから、この式は式(\ref{x})に等しい。

$x<0$ の場合

$\mu>0$ より式(\ref{y})は \begin{eqnarray} y &=& -\frac{\log_e(1-\mu x)}{\log_e(1+\mu)} &<& 0 \end{eqnarray} である。変形してゆくと \begin{eqnarray} y \log_e(1+\mu) &=& -\log_e(1-\mu x) \\ && 両辺に -1 を掛けて \nonumber\\ -y \log_e(1+\mu) &=& \log_e(1-\mu x) \\ && 両辺の指数を取って \nonumber\\ \exp(-y \log_e(1+\mu)) &=& 1-\mu x \\ && 一般に e^{a b}=(e^b)^a と書けるので \nonumber\\ \left\{\exp(\log_e(1+\mu))\right\}^{-y} &=& 1-\mu x \\ && \exp と \log_e が打ち消し合うので \nonumber\\ (1+\mu)^{-y} &=& 1-\mu x \\ && 移項して \nonumber\\ \mu x &=& 1-(1+\mu)^{-y} \\ && 両辺を \mu で割って \nonumber\\ x &=& \frac{1-(1+\mu)^{-y}}{\mu} \\ && y<0 だから {\rm sgn}(y)=-1 なので次のように書いてもよい \nonumber\\ x &=& {\rm sgn}(y)\frac{(1+\mu)^{-y}-1}{\mu} \\ && y<0 だから -y=|y| とも書けるので \nonumber\\ x &=& {\rm sgn}(y)\frac{(1+\mu)^{|y|}-1}{\mu} \end{eqnarray} この式は式(\ref{x})に等しい。

$x=0$ の場合

式(\ref{y})は \begin{eqnarray} y &=& -\frac{\log_e(1)}{\log_e(1+\mu)} &=& 0 \end{eqnarray} となり、式(\ref{x})は \begin{eqnarray} x &=& 0 \frac{(1+\mu)^0-1}{\mu} \\ &=& 0 \frac{1-1}{\mu} \\ &=& 0 \frac{0}{\mu} \\ &=& 0 \end{eqnarray} となり、$x=0$ を正しく復号できる。