四元数 (しげんすう)

複素数が \begin{eqnarray} x&=&a+b i,\\ && \quad i^2=-1 \end{eqnarray} であるのに対して、四元数は \begin{eqnarray} y &=& a+b i+c j+d k, \\ && \quad i^2=j^2=k^2=-1,\\ && \quad ij=k, jk=i, ki=j \\ && \quad ji=-ij,-kj=jk,ki=-ik \end{eqnarray} を満たすもので、クォータニオン (quaternion) とも呼ばれる。 四元数で積の交換法則は成り立たない。

次元の呪い (じげんののろい)

対象となる領域の次元が高くなると、演算量、メモリ容量、誤差などが急速に増大するために、事実上計算不能になる現象。

対象領域を微小領域に分割して数値的に偏微分方程式を解いたり、パラメータを推定するような場合に問題になる。 次元が高くなると、前者では演算量やメモリ量が、後者では推定誤差が爆発的に増大してしまう。

例えば、高い周波数で駆動された物体の振動をシミュレートする場合、x 方向に置かれた線分(弦:1次元)を1万の微小な線分に等分割して計算するのは簡単でも、正方形(膜:2次元)では x,y 各辺に沿って同じように分割すると微小領域の総数は 1万×1万=1億個 になって計算時間が耐え難いほど長くなり、立方体(立体:3次元)では x,y,z 各辺に沿って同じように分割すると微小領域の総数が 1万×1万×1万=1兆個 になってメモリ的にも計算不能になる。

次数 (じすう)

単変数の多項式(単項式を含む)の場合、使われている変数の べき の内で最大のものを、その多項式の次数という。

【例】 \(f(x)=x^2+2x+1\) は \(x^2\) の項が \(x\) の最大の冪であるから、この多項式の次数は 2 である。
【参考】 数学的には \(f(x)=0\) の次数は 0 ではなく \(-\infty\) と定める。

フィルタの場合は、伝達関数の多項式 (有理式の場合は分母子の多項式) の次数をフィルタの次数とする。

従う (したがう)

数学独特の言い回しで、「A が従う」は「従って A が成り立つ」の意。

時不変 (じふへん)

時間の経過とともに特性が変化しないこと。逆は「時変」という。

システムが線形であり、かつ時不変な場合は、システムの特性は時間領域のインパルス応答、または周波数 \(s\) 領域の伝達関数多項式、またはその虚軸 \(s=i\omega\) 上での評価に相当する周波数特性によって完全に記述できる。

時変 (じへん)

時間の経過とともに特性が変化すること。逆は「時不変」という。

適応フィルタやマルチレートなシステムは「時変」といえる。

射影座標 (しゃえいざひょう)

同次座標のこと。

周期 (しゅうき)

繰り返しの間隔のこと、または繰り返されている部分のこと。音の場合、周期の単位は秒である。周期の逆数は基本周波数という。

周期関数 (しゅうきかんすう)

関数 \(f(x)\) に同じ形が繰り返されており、次式のように、ある \(L\neq 0\) だけズラした \(f(x-L)\) が \(f(x)\) に一致するものを周期関数という。 \begin{equation} f(x-L) = f(x),\ 0\lt |L|\lt \infty \end{equation}

\(x,L,f(x)\) いずれも実数である必要はなく、整数でもよいし、複素数でもよい。

恒等的に 0 である場合を除き、周期関数の \(L_2\) ノルム(物理的にはエネルギーに相当)は \(\infty\) となるため、超関数であるディラックの \(\delta\) 関数 を用いない限り、通常の意味でフーリエ変換は存在しないが、1 周期を切り出してフーリエ級数展開することはできる。

【参考】周期波形

周期波形 (しゅうきはけい)

ある長さで波形が反復しているものを周期波形といい、その長さ \(L\) を周期という。

周期波形は倍音構造を持ち、フーリエ級数に展開できるが、級数が元の周期波形に一様収束するとは限らない。

【参考】周期関数

十二平均律 (じゅうにへいきんりつ)

対数周波数軸上で 1 オクターブを等間隔に 12 分割した周波数を採用する音律。

純正律などに比べて和音の響きが若干悪いものの、転調・移調を自然に行えるため、ひろく用いられている。

周波数 (しゅうはすう)

1秒間に繰り返される周期の数で、周期の逆数によって計算される。音の場合の単位はヘルツ [Hz]。

人間の耳は音圧波形そのものを感じるのではなく、狭い共振周波数を持つ有毛細胞群によって音圧波形を周波数毎の成分に分解して音を知覚しているため、波形で考えるよりもスペクトル(様々な周波数成分の集まり)として考える方が人間の感覚に近いことが多い。

周波数特性 (しゅうはすうとくせい)

連続時間線形時不変システムの場合、伝達関数 \(H(s)\) を複素平面 \(s=\sigma+i\omega\) の虚軸 \(s=i\omega\) 上で評価した (周波数の) 関数 \(H(i\omega)\) を「周波数特性」という。 離散時間の場合は、伝達関数 \(H(z)\) を \(z\) 平面の単位円周 \(z=e^{i\Omega}\) 上で評価した \(H(e^{i\Omega})\) が周波数特性である。 どちらの場合も伝達関数は一般に複素数なので、周波数特性も複素数に値を取る。

複素数値を取る関数をそのままグラフ化することはできないため、複素数 \(z\) の振幅 \(|z|\) だけをグラフ化した振幅周波数特性、複素数の位相 \(\arg(z)\) だけをグラフ化した位相周波数特性もよく用いられる。

【参考】 長い間「人間の耳は位相には鈍感である」といわれてきたため、オーディオ分野では、単に「周波数特性」というと「振幅周波数特性」を意味することが多い。 このためオーディオ関係の方と他分野の方が話をすると、話が噛み合わないことがある。

線形時不変システムに対して、振幅と位相をセットにした周波数特性、または複素の周波数特性は、時間領域のインパルス応答と本質的に同じ情報を持っている。 インパルス応答をフーリエ変換すると複素の周波数特性となり、それをフーリエ逆変換すると元のインパルス応答に戻る。元に戻せるということは、情報が失われていないということである。

主点 (しゅてん)

レンズの光学的中心と見なせる点のこと。前後対称なレンズの場合はレンズの物理的中心が主点となる。

【参考】主点から焦点までの距離を焦点距離という。

条件数 (じょうけんすう)

$p$-ノルム下での行列 $\boldsymbol{A}$ の条件数は次のように定義される。 \begin{eqnarray} \kappa_p(\boldsymbol{A}) &\triangleq& \|\boldsymbol{A}\|_p \|\boldsymbol{A}^{-1}\|_p \end{eqnarray}

一般に条件数が大きいほど悪条件で、連立一次方程式や固有値問題を精度良く計算するのが困難になる。

シンセサイザ (しんせさいざ)

楽器音響分野では、演奏可能な楽器音出力装置のうち、実在する自然楽器以外の音を出せるものをシンセサイザという傾向にある。

【参考】 現代の電子ピアノの構成はサンプリング方式のシンセサイザと同等だが、ピアノという実在の楽器音をできるだけ正確に再現することを目指しており、非現実的な音色を出力する機能は付与されていないため、商業上「シンセサイザ」とは呼ばれない。
【参考】 現代の電子オルガンとシンセサイザの境界は曖昧で、構成上、大きな違いは無い。家具としての配慮がなされたキャビネット型のもの、足鍵盤が一体になったものは「シンセサイザ」ではなく「電子オルガン」として販売されている。

大きく分けると、減算方式やFM音源のように発振器から出力される波形を加工する方式と、メモリに記録された波形を加工するサンプリング音源方式の 2 つに分類できる。

当初は電子回路によるハードウェア・シンセサイザだけであったが、電子デバイスの進歩により、近年はコンピュータやスマートフォンだけで演奏可能なソフトウェア・シンセサイザもあり、無料で入手できるものも多い。

現代のシンセサイザは MIDI という通信規格によって外部から制御可能なため、鍵盤を持たない音源部だけのハードウェア・シンセサイザもある。

振幅スペクトル (しんぷくすぺくとる)

複素スペクトル \(X(\omega)\) に対して、その大きさ \(|X(\omega)|\) を振幅スペクトルという。