F

FFT (えふえふてぃー)

FFT は "Fast Fourier Transform" の略で、高速フーリエ変換 のこと。

FIR (えふあいあーる)

FIR は Finite Impulse Response の略で、「有限インパルス応答」と訳されている。 今日では下図のような構造のディジタル・フィルタである場合がほとんどである (昔はバケツリレー素子等を使ったアナログ・フィルタもあった)。

この構造の FIR はフィルタ係数 \(\{h_0, h_1, h_2, \cdots h_N\}\) がそのままインパルス応答に等しくなるという著しい特徴を持つため、時間領域で指定されたインパルス応答を実現する場合、インパルス応答があまり長くないなら、FIR 型フィルタでの実現が最適となる。

【参考】 図中の入力信号 \(x_n\) が、並んだ遅延素子 \(z^{-1}\) を横切るように伝わってゆくことから、FIR は「トランスバーサル・フィルタ (Transversal【意味】横切る, 横断する filter)」と呼ばることもある。

FIR タイプのフィルタは内部にフィードバック・ループを持たないため、入力信号が途絶えて (0 ばかり入力されるようになって) 一定時間経過すると、出力も途絶える (0 ばかり出力される) 性質を持つ。 このため通常の FIR でリミット・サイクルと呼ばれる発振現象が生じることはない。

【参考】入力信号が途絶えても、いつまでも 0 以外の出力が続くタイプは IIR (Infinite Impulse Response) と呼ばれる。
【参考】入出力にだけ注目すると FIR になっているが、フィルタ内にフィードバック・ループがあり、内部に IIR 部分を含む (最終的な出力に至るまでにキャンセルされて FIR になる) 場合は、リミット・サイクルを生じることがあり得る。

フィルタ係数を \(h(n),\ n=0,1,2,\cdots N\) とすると、その伝達関数は次のように表せる。 \begin{eqnarray} H(z) &=& \sum_{n=0}^N h(n) z^{-n} \label{Hz} \end{eqnarray}

式(\ref{Hz})の \(\displaystyle\sum_{n=0}^N\) の上にある \(N\) はディジタル・フィルタの次数と呼ばれ、FIR では有限である。

【参考】\(N\) 次 FIR の場合、入力が途絶えて 0 ばかりになった後、\(N\) サンプル以降の出力は 0 ばかりになる。
【参考】無駄なく設計された FIR フィルタでは、タップ数=次数+1 である。

FIR タイプのフィルタは、直線位相(リニア・フェーズ)特性を実現でき、全周波数で群遅延一定のフィルタを作ることができる。

【参考】FIR は直線位相のフィルタしか作れないわけではない。最小位相のフィルタを作ることもできるし、次数を高くすれば任意の振幅・位相特性をいくらでも精度良く近似できる。